1.耐震改修の進め方

耐震診断によって耐震性能が十分でないと判断された場合は、耐震改修に取り組みましょう。まず、最初に「補強設計」を行います。補強設計とは、目標となる耐震性能を定め、施工の条件、コスト、工期などから耐震改修工法を選定し、目標となる耐震性能を実現する設計(構造設計、図面作成等)を行うことです。

2.耐震改修の種類と工法

耐震改修は、大きく分けて①耐震補強、②制震、③免震の3つの方法があります。また、それぞれの方法には様々な工法があります。補強設計の段階では、建物所有者の意向を踏まえ、設計者が適切な工法を選択します。

≪主な耐震改修工法≫

●後打ち壁の増設  :新たな壁を鉄筋コンクリート等で増設します。建物内部、外部ともに設置できます。

●鉄骨枠組補強  :柱・はりに囲まれた中に鉄骨ブレースを増設します。開口部を残しながら耐震性能を向上させることができます。

●外付け鉄骨補強  :建物の外側に鉄骨ブレースを増設します。既存の壁やサッシュの解体が少なく済みます。

●バットレスの増設  :耐震壁などの構造躯体を建物の外側に増設します。建物周囲や敷地に余裕がある場合に適しています。

●柱巻き付け補強 :既存の柱に繊維シートや鋼板を巻き付ける方法です。マンションではよく使われる工法です。

●耐震スリットの新設 :鉄筋コンクリート造の既存建物の柱の近くに隙間を設け、柱の粘り強さを向上させます。

●制震機構の組込み :制震ダンパーなどで建物に影響を与える地震力を吸収することにより、構造体の損傷低減を図ります

●免震構造化 :免震装置を建物の基礎の下や中間階に設けることで、地震力の建物への影響を大幅に低減します。

3.耐震改修工事の費用は?

耐震改修の費用は、建物の設計図の有無や建物の形状、建築年数等により異なります。そのため、実施時期や工法選択には十分な検討を要しますが、設備機器のリニューアルや内外装の改修工事を同時に行うことで、単独で改修工事を実施するよりも費用や工期が低減できる場合もあります。

≪東京都の建物の耐震化に関するアンケート≫

  • 耐震補強工法によるコストは、延べ面積3,000~5,000㎡規模の建物が最も高くなる傾向があります。(約58千円/㎡)
  • 耐震化コストは、耐震補強工法で平均で約40千円/㎡、制震補強工法で約120千円/㎡、免震補強工法で約230千円/㎡となっています。
  • 工期は、、耐震補強工法で平均で約9月、制震補強工法で約22月、免震補強工法で約23月となっています。