第3段階:強制執行

 債務者の保有財産の調査を行い、債務名義等の準備が整った段階で、実効性のある法的措置をとることとなります。法的措置には、①専有部分等の担保不動産競売の申立て、②区分所有者の資産に対する強制執行、③区分所有法第59条による競売の3つの方法があります。

    専有部分等の担保不動産競売の申立て

 区分所有法第7条に定められた先取特権を実行することを指します。管理組合が有する「管理費等を支払ってもらう」という債権は、債務者の区分所有権とその建物に備え付けられた動産に対して先取特権を有します。したがって、債務者の保有財産の調査において、先取特権を行使する実効性を有すると認められた場合には、管理組合は裁判所に対して先取特権に基づく不動産競売を申し立てることができます。この先取特権の実行は、訴訟手続きを経なくても実行できるのが特徴です。ただし、不動産競売できるのは、建物に備え付けた動産に対する担保権の実行では、滞納金が回収できないという場合に限られます。また、不動産競売の対象となる資産の範囲は、専有部分等に限定されます。

    区分所有者の資産に対する強制執行

 債務者の保有資産の調査によって、債務者に預金やその他の保有財産があると認められたときには有効な手段です。上記の先取特権とは異なり、対象となる資産の範囲には制限がありません。主に、不動産、動産、債権などを指しますが、例えば、給与債権であれば、相手方が勤務している会社に対してもっている債権を差し押さえて、会社から支払われる給与を強制的に回収するというものです。そして、差押命令が相手方に送達されて1週間が経過すると、第三債務者から直接債権を取り立てることができますので、非常に効果の高い財産と言えます。しかし、給料の差し押さえにおいては、相手方の生活もありますし所得税の天引きなどがありますので、手取りの全額を回収することはできませんし、銀行口座を差し押さえる場合も、銀行に残高が無かった場合など空振りに終わってしまうということもありますので、あらかじめ十分調べておく必要があります。

    区分所有法第59条による競売

 上記①②の方法でも滞納管理費等の全額が回収できない場合には、最終手段として区分所有法第59条による競売を申し立てる方法があります。この方法は、他の方法では区分所有者の共同生活の維持が困難であると認められる場合にのみ、最終手段として実行できます。競売によって区分所有権が売却されると、新しい所有者が滞納管理費等を支払うこととなります。また、競売の申立て前に競売請求訴訟を提起し、認容判決を得る必要があります。